EViews ユーザ事例 第8回
学んだことを「業務に活かせる」ことが大切!(1)
早稲田大学大学院 ファイナンス研究科 宇野 淳 教授
[リンク:早稲田大学大学院 ファイナンス研究科]
研究分野:財政学、金融論 | |
論文・書籍・発行元
・『価格はなぜ動くのか―金融マーケットの謎を解き明かす』(編著) 日経BP社、2008年2月 ・「指値注文の執行確率」(共著) 『資産運用の最先端理論』日本経済新聞社、2002年3月(127-156頁) ・「わが国株式市場における最良執行義務と市場間競争」『証券アナリストジャーナル』第43巻第11号、2005年11月(79-88頁)など |
今回は桜の美しい季節の東京日本橋に、早稲田大学大学院ファイナンス研究科・宇野淳教授をお訪ねしました。講義でEViewsをご活用いただいている宇野先生に「仮装市場システム」やご専門であるマーケット・マイクロストラクチャー、さらにEViewsの利用方法などについてお話を伺いました。
ファイナンス研究科の“仮想市場システム”
―― ファイナンス研究科のフロアに入ると、まず「仮想市場システム」が目を引きます。このシステムを利用してどのような講義を行っているのでしょうか。
【宇野先生】
これは仮想的なマーケットで学生に投資家として行動してもらい、マーケットを実感してもらう機会にしています。ファイナンス研究科で学んだことは、実際の仕事に応用できることがたくさんあります。ただ、知識があればこれを適確に使えるというものでもありません。
生きている経済やマーケットで適切な意思決定をするにはそれなりのトレーニングが必要です。「仮想市場実験」という講義では、仮想的な設定のもとで、知識を応用する機会に挑戦してもらっています。プロの投資家にとっても、普段試してみるわけにいかない「戦略」を仮想市場で実行し、有効性や問題点を考察するのに役に立ちます。
―― 例えば、どんな戦略でしょう?
【宇野先生】
「実験ならでは」ということで試すことができるのは、例えば「ポジション(金額)」を持ち続ける長さや、ポジションを普段よりも大きく取ってみるなどです。会社では社内ルールや資産規模によってポジションは制約を受けます。授業では、リスクを大きくとって運用することを試すことにより、派生する問題を直接経験することができます。
「損切り」が必要な場面を考えてみてください。「仮想市場」であっても自分の投資した資産で損失が発生した場合、呆然として「思考停止」状態になってしまうことがよくあります。損失を出してしまった自分の間違いを冷静に認めることの難しさを、本番さながらに体験することになります。「損切りルール」を普段から定め、これを実行することの大切さが強く認識されます。投資家として冷静に、かつ合理的に行動することは結構難しいものなのです。
―― 先生の研究テーマである「マーケット・マイクロストラクチャー」とはどのようなものなのでしょうか?
【宇野先生】
マーケットを「箱」と捉えれば、マーケット・マイクロストラクチャーはその箱のなかにある仕組みを研究する分野です。市場参加者(誰でも参加できるのか、プロのみが参加できるのか)、取引時間の長さ、注文の出し方、売りと買いのマッチングの方法、優先順位など、細々とした制度設計が積みあがってマーケットは機能しています。そのマーケットへの参加者である投資家やトレーダーといった主体の行動や、マーケットに流れてくる「情報」と価格の関係も「マーケット・マイクロストラクチャー」が扱う重要なテーマです。
―― ファイナンスの実証分析手法のひとつである「イベントスタディ」についてお訊ねします。「イベントスタディ」とは実際にどのような分析を行うことなのでしょうか。
【宇野先生】
企業が時価発行増資など、資金調達のアナウンスを行ったとします。この時、マーケットの反応はどのように予想できるのか?
過去にあった同じようなアナウンスに対するデータを集めて実際の株価の反応を調べ、理論的予想と対比します。このような分析手法を「イベントスタディ」といいます。学生はファイナンスに関する「理論的な知識」、イベントスタディ等による「実証分析」、そして仮想市場における「実験学習」を合体することで、実際の資産運用で活用できる知識と技能を身につけることができます。
EViewsのアカデミックサイトライセンスをご導入いただいているファイナンス研究科の教室で、ライトストーンのスタッフが毎年新入生の方を対象にした「EViews基本操作講習会」を行っています!