EViews 13の新機能

EViews 13がリリースされました。ここではEViews 13で新しく加わった、または更新された機能の一部を紹介します。

新しいインターフェース

EViewsはこれまでも使いやすいインタフェースに定評がありましたが、EViews 13ではさらにインタフェースが改善されました。代表的な機能をご紹介します。

ペインとタブの新しいユーザインターフェース

EViews 13ではペインとタブを利用するユーザインタフェースが選択できるようになりました。このインターフェースでは、比較的小さいモニターでの使用に特に適しています。従来の複数ウィンドウインターフェースは大きなモニターでアドバンテージを発揮していましたが、小さいスクリーンでは複数ウィンドウの利点を得られないことがありました。
ペインとタブによるUIモードでは、異なるタイプのウィンドウがEViewsウィンドウにドッキングされた形で開きます:

ペインとタブの新しいユーザインターフェース

プログラムのデバッグ

EViews 13は、作成したEViewsプログラムのデバッグ機能が追加され、プログラムのエラーの原因を特定する手助けが出来るようになりました。デバッグツールは、任意のブレークポイントを設定し、プログラムを実行、各ポイント毎にワークファイルや変数の状態を確認することも可能です。

プログラムのデバッグ

プログラムの依存関係のログ機能

EViews 13は、EViewsプログラムの外部依存関係(ワークファイル、データベース、他のプログラムなど)について自動的にログを作成するようになりました。この機能では、プログラムを実行する際にProgram Dependenciesウィンドウが開き、プログラムが依存関係にあるソースに関する情報を表示します。

プログラムの依存関係のログ機能

Jupyter Notebookサポート

EViews 13は、Jupyterカーネルとして利用できるようになり、Jupyter Notebook上でEViewsプログラムを作成・実行して、結果をNotebook内で確認出来ます。

グラフと表

グラフの線とシェードの透過

EViews 13では、グラフの線とシェードの透明度を個別に設定できるようになりました。スタックされたグラフでは背後に隠されていたプロットをわかりやすく描画でき、また散布図では分布の密度を表現するのに便利です。

グラフの線とシェードの透過

データラベルのカスタム

グラフのデータラベル機能が強化、グラフに情報を追加したり、観測値ベースのラベルを簡単に付与出来ます。EViews 13では次のようなことが可能になりました:

  • すべての観測値にラベルを追加、ラベルを追加しない、最初/最後の観測値のみに追加
  • データの値、観測値、系列名または任意のテキストをデータラベルとして設定
  • データラベルのフォント、サイズ、配置の編集
データラベルのカスタム

Geomapのラベルのカスタム

Geomapのデータラベルはこれまでシェープファイルに記録されている属性のみでしたが、EViews13ではカスタムテキストを適用し、フォント、サイズ、複数行での表示が可能になりました。

Geomapのラベルのカスタム

High-Low-Medianカラーマップのプリセット

EViews 12ではスプレッドシートやGeomapに適用できるPositive-negativeカラーマップなどがプリセットされていましたが、EViews13では最大値、最小値、中央値を表す新しいプリセットが追加されました。

High-Low-Medianカラーマップのプリセット

表の列と行の固定

EViews 13では表の行と列を固定し、他のセルをスクロールしても、特定の行や列が常に表示出来るようになりました。例えば、1行目に列名が含まれていたり、1列目に観測値のIDがあるような場合、横または縦方向にスクロールしても常に列名とIDを確認することが出来ます。

表の列と行の固定

計量経済学と統計学

ARDLモデルの強化

自己回帰分布ラグ(ARDL)モデルの推定機能が強化され、説明変数が基準値から正または負の影響に変化するような、複雑な関係を考慮した非線形ARDLモデルをサポートしました。従来のモデルでは長期的な共和分関係は対称性のある線形接続であることを想定していますが、非線形ARDLモデルでは短期および長期の非線形性を説明変数の正/負のpartial sum decompositionとしてモデル化します。

Pooled Mean Group (PMG)推定の強化

大規模なパネルデータでは、プール平均グループ(PMG)推定が良く用いられますが、PMGではARDLモデルの共和分をパネル設定に適用し、クロスセクショナルに異なる切片、短期的な係数、共和分項を許容します。EViews13ではPMGモデルが拡張され、次の2点が新たに追加されました。

  • 確定的トレンド(dterministic trend)の設定の大幅な拡張
  • 非対称なリグレッサの設定

差分の差分推定

差分の差分(Difference-in-Difference)推定は、処置を受けた個体への平均的な影響/効果を推定する、因果推論で良く用いられる手法です。EViews13では2方向の固定効果を考慮した差分の差分モデルの推定と、Goodman-Bacon (2021)、Callaway and Sant’Anna (2021)および Borusyak, Jaravel, and Spiess (2021)が提案したモデル診断をサポートします。

VEC推定の強化

従来のEViewsが提供するベクトル誤差修正(VEC)モデルでは、様々なビルトインの確定的トレンドと、短期的な変動を考慮した制約のない外生変数の追加をサポートしていましたが、任意の外生変数に共和分関係を追加することに制限がありました。EViews 13では制約付きリグレッサの制限が取り除かれ、次の2点が利用できるようになりました。

  • 制約付き・無制約の確定係数についてより柔軟な設定を可能にする確定的トレンド仮定のプリセット
  • 共和分関係の制限付き外性変数、無制限変数、およびさまざまな係数を取得するために使用される直交仮定を使用して、短期方程式と長期方程式の両方に変数を追加
表の列と行の固定

時変ベクトル自己回帰モデルのベイズ推定

時変ベクトル自己回帰モデル(TVCVAR)は、時間変化と共に係数がスムーズに変化する非線形VARモデルです。EViews13ではベイジアンTVCVAR (BTVCVAR)の推定をサポートしています。BTVCVARは、ベイズ推定をあまり利用しない研究者の間でも良く用いられます。これは、BTVCVAR、それを必要とするモデルの収縮を誘発する便利な方法を提供するためです。

ARDLの診断機能

非対称ARDのサポートと合わせて、長期的な関係の診断とモデル設定が適切であるかを評価する、ARDLモデルの診断機能が追加されました。

  • ARDLモデルの長期的および短期的なラグ変数と共和分関係を確認出来る表示ツール
  • 独立変数の従属変数に対する累積的な限界貢献度を示す、累積的な動学乗数(cumulative dynamic multiplier: CDM)グラフ
  • ARDLモデルの共和分の境界検定
  • 非対称な長期・短期的なリグレッサの係数に対する対称性の評価
CDMグラフ

パネルARDL/PMGの診断機能

非対称ARDL/PMGのサポートと合わせて、長期的な関係の診断とモデル設定が適切であるかを評価する、PMG推定の診断機能が追加されました。

  • PMG推定の長期的および短期的なラグ変数と共和分関係を確認出来る表示ツール
  • クロスセクショナルな、ARDLモデルでの共和分の境界検定
  • 非対称な長期・短期的なリグレッサの係数に対する対称性の評価
  • 平均グループと動学的固定効果推定量とPMG推定量の類似性に関するハウスマン検定

インパルス応答グラフの強化

EViews 13ではインパルス応答(および分散分解)の信頼区間の計算とグラフ機能が大幅に拡張されました。ユーザ定義の複数の信頼区間を設定し、グラフに網掛け表示出来ます。

インパルス応答グラフの強化

データハンドリングとデータベース

データハンドリング

日次データの季節調整

EViews13では、Ollech (2021)による季節調整アルゴリズムを利用し、日次データの季節調整が可能になりました。一週間(7日)と一週間(5日)のどちらでも対応が可能です。

新しいExcelファイルの出力エンジン

従来のEViewsではExcelがインストールされていなければ、Excelファイル形式でデータを出力出来ませんでしたが、EViews13の新しいExcel2007出力エンジンではExcelがインストールされている必要がなくなりました。さらに新しいエンジンではより効率的に大規模データが出力できたり、既存のExcelファイルにデータを書き加えたり出来るようになりました。

祝日の関数

@holidayと@holidayset関数は観測値ごとに年次祝日の比率を返します。さらに"epiphany", "goodfriday", "easter", "easter-monday", "ascension", "pentescost", "whitmonday", "assumption", "allsaints", "immaculate", "christmas", "saintstephen"および元日、旧正月などの主な祝日をサポートします。

データベースとファイルフォーマット

SDMXデータベース

EViews13では、SDMXデータベースのサポートが強化され、オーストラリア統計局(Australian Bureau of Statistics SDMX Web Services)、ドイツ連邦銀行(Deutsche Bundesbank SDMX)、Insee (L'Institut national de la statistique et des etudes economiques) SDMXをサポートします。データベースに接続するにはインターネット接続が必要です。

Trading Economics

Trading Economicsは経済指標、株式市場、国債、為替レート、および商品価格に関するさまざまな過去のデータおよび予測データへのアクセスを提供します。データベースに接続するにはインターネット接続が必要です。データベースの詳細は、Trading Economicsのページをご覧ください。

世界保健機関

世界保健機関(WHO)は、広い範囲の健康に関連したデータと統計情報へのアクセスを提供します。データベースに接続するにはインターネット接続が必要です。データベースの詳細は、WHOのページをご覧ください。

行列言語サポート

新しいデータインポート・エクスポートエンジン

データエンジンが新しくなり、テキスト(ASCIIおよびバイナリ)、HTML、Excel XLSX、Excel 97 XLSファイルからEViewsの行列オブジェクトに直接データを読み込めるようになりました。エクスポートでは、ASCII、バイナリ、HTML、RTF、Excelフォーマット、LaTeX、MarkdownおよびPDFをサポートします。

行・列ラベルのサポート

行列オブジェクトに行および列ラベルを追加できるようになりました。

行列データへのアクセス

EViews13では行列オブジェクトの要素を抽出する便利なツールが追加されました。@fill()、@range()、@seq()などの既存の関数の機能が強化され、また使いやすくなりました。

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