時変係数VARモデルを推定する

時変ベクトル自己回帰モデル(TVCVAR)は、時間変化と共に係数がスムーズに変化する非線形VARモデルです。EViewsではベイジアンTVCVAR (BTVCVAR)の推定をサポートしています。BTVCVARは、ベイズ推定をあまり利用しない研究者の間でも良く用いられます。これは、BTVCVAR、それを必要とするモデルの収縮を誘発する便利な方法を提供するためです。


時変係数VARとは

  • パラメータが時間に依存せず一定であるというVARモデルの前提を満たすことが難しいことがある場合、一般的に、スイッチングVARや時変係数VAR(time-varying coefficient VAR: TVCVAR)が代替手段として考えられます。 EViewsではこのTVCVARを、ベイズ推定を利用したベイジアンTVCVAR (BTVCVAR)を提供します。時間ごとのインジケータ変数を設定すると、観測方程式は標本サイズに関わらず過剰定式化となってしまいますが、ベイズ推定によるTVCVARでは、事前情報を利用したモデルのシュリンクが可能です。
    グループオブジェクト

ベイジアン時変係数VARモデルの推定

操作方法

  1. サンプルファイルはこちらからダウンロードできます。
    ワークファイルにはGDP、UNEMP(失業率)、INTEREST(金利)、INFLATION(インフレ率)を含みます。まずワークファイルのサンプル期間を1948Q4 2009Q4に設定します。
  2. Quick > Estimate VAR...と操作し、VARモデルの推定ダイアログボックスを開きます。MethodドロップダウンリストでBayesian TVCVARを選択します。内戦変数にgdp, unemp, interest, inflationを選択します。1期のラグを指定するためLags for endogenousで"1 1"と入力します。
    これをコマンド操作で行うには、コマンド欄で次を実行します。
    var myvar.btvcvar(nu1=7, nu2=6, size=20000, burn=1000, usemean) 1 1 gdp unemp interest inflation
    グループオブジェクト
  3. OKをクリックして推定を開始します。EViewsはウィンドウ左下にサンプラの進捗状況を表示します。
    単位根検定の設定
  4. 次のように結果が表示されます。BTVCVAR の推定結果はスプールオブジェクトで出力されます。要約がトップに表示され、方程式ごとの係数の時間ごとの変化を表すグラフが続きます。
    単位根検定の結果
  5. BTVCVARは計算を高速化するため、デフォルトでは信用区間の計算を行いません。表示するには、VARツールバーのEstimateボタンをクリックしOptionsタブを開きます。例えば30%信用区間を網掛け表示するには、Show credibility intervalsにチェックを入れ、Credibility levels0.3と入力し、OKをクリックします。
    単位根検定の結果
    単位根検定の結果
    BTCVARはデフォルトで事後分布における中央値を描画します。これを事後平均に変更する場合は、上記のダイアログボックスのPoint estimate type:ドロップダウンリストでPosterior meanを選択し、再度推定します。

インパルス応答

標準的なVARモデルのインパルス応答関数(IRF)は、ショックがVARシステムに与える影響を、ショック発生後の経過時間の関数として表します。VARの係数は一定であるため、ショックのタイミングは関係なく、ある日に発生したショックに対するシステムの応答は、別の日に発生した同じショックに対する応答と同一です。 対照的に、TVCVARのIRFは、ショックの発生時期とショック発生後の経過時間の両方の関数です。TVCVARでは、VAR係数が時点によって異なり、特定のショックに対するシステムの反応が異なるため、タイミングが重要になります。
概念的にTVCVARのIRFは、2つの軸、1つはショックの日付、もう1つは観測期間を固定し計算されるインパルス応答です。

  • Fixed dateのTVCVAR IRFは、その日付のTVCVAR係数を用いて生成される標準的なVAR IRFです。Fixed date IRFは、指定された日付におけるショックがシステムをどのように通過するかを示します(係数は観測期間を通して固定されていると仮定します)
  • Fixed horizonのTVCVAR IRFは、異なる日付でショックを受けたVARシステムが、特定の期間内において、どのようにIRを生成するかを示します(係数は観測期間を通して固定されていると仮定します))。固定期間のクロスセクションIRFは、クロスセクション固定日付IRFの調和から得られます。

IRFダイアログボックスは他のVARモデルと同様に、ツールバーのImpulseボタンをクリックして呼び出します。TVCVAR IRFダイアログボックス右上の、Periodセクションでは、固定日付または固定期間のIRを計算するかを制御します。

単位根検定の結果

日付固定IRF

  1. Fixed period typeをDatesにして、編集ボックスに1984q4 2009q4と入力すると、EViewsは1984q4と2009q4以降のIRFを計算します。 コマンドでは次のようにと入力します
    myvar.impulse(dates="1948q4 2009q4")
    単位根検定の結果
    単位根検定の結果
  2. 左側のインタラクティブパネルを使って表示をカスタマイズできます。ImpulsesとResponsesツリーの横にある+アイコンをクリックすると、インパルスとレスポンスのリストが展開されます。両方のリストからINTERESTとINFLATIONの選択を解除すると、GDPとUNEMPの結果のみが表示されます。
    単位根検定の結果
    左上のグラフ「Response of GDP to GDP Innovation」は、GDPが自身の、1984Q4と2009Q4それぞれのショックに対して、観測期間の開始時と終了時では、有意な差は無いことを示しています。対照的に、GDPのUNEMPに対する反応、UNEMPのGDPに対する反応、UNEMPのUNEMPに対する反応は、1948Q4と2009Q4ではすべて有意に異なります。
  3. 期間固定IRF

  4. 次に、固定期間のIRを計算します。ImpulseボタンをクリックしてIRFダイアログを再度開き、Fixed period type:の種類としてHorizonsを選択し、「Horizons」フィールドに5 9と入力し、「Show credibility intervals」をクリックしてOKをクリックして続行します。
    コマンドでは次のように入力します
    myvar.impulse(se=bayes, horizons="5 9", showci) gdp unemp @imp gdp unemp
    単位根検定の結果
  5. TVCVAR IRの計算には、EViewsが推定標本の各日付ごとに1つずつ、指定された最大期間までの245個のインパルス応答を計算するため、かなり時間がかかることに注意してください。
    完了すると、EViewsは長さ5と9でIRを表示します。
    単位根検定の結果
  6. 左側のパネルで、期間リストから「5」の選択を解除し、Output ViewsツリーでMultiple graphをクリックすると、観測期間9の応答のみがグループ化されたグラフに表示されます。
    単位根検定の結果
    左下のグラフ「Response of UNEMP to GDP Innovation at Horizon 9」は、GDPショックによるUNEMPへの影響は、2000年以降よりも2000年以前の方が早く消失したことを示しています。ただし、2000年以降の日付では信頼区間がかなり広くなっています。
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