VARモデルにおけるIRFの局所射影法

EViews 14 は、標準的な逐次推定(sequential local projection)と同時推定(joint local projection)の両方を使用したLocal Projectionによるインパルス応答の推定をサポートしています。このページでVARモデルにおけるIRFの局所射影法を紹介しています。


標準的なインパルス応答関数

    VAR推定

  1. ここでは、経済セミナー2025年4・5月号掲載「マクロ経済政策評価のための時系列分析」内の「5. 実証例(1): 局所予測法による物価と金利の分析」を再現します。 サンプルデータセットはこちらからダウンロードしてください。
  2. 本文にありますようにCPIは物価指数の対数、RSRはコールレートとシャドーレートを接続したものです。
    まずは、VARモデルを推定します。内生変数はCPIとRSRなので、ワークファイル上でCPIとRSRを選択し、右クリック > as VARを操作し、VARダイアログボックスを開きます。
    データ
  3. 推定するモデルのラグの次数は16なので、lag intervalsを「1 16」に設定し、OKで推定します。
    データ
  4. インパルス応答解析

  5. Impulseボタンでインパルス応答解析ダイアログボックスを開きます
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  6. 50期先まで予測するため、Horizon lengthを「50」に設定して、Method for SEs and Cisを「None」として信頼区間を計算しないようにします。
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  7. Impulse definitionタブで「Residual – one unit」を選択して残差に1単位のショックを与えるよう設定します
    データ
  8. OKをクリックしインパルス応答関数を計算し、Nameボタンをクリックして、「VAR01」という名前で保存します。
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局所射影法とオプション

    局所射影法によるIRF

  1. 局所射影法によるIRFの計算は、インパルス応答解析ダイアログで、Horizon lengthはそのまま、Estimation methodを「Joint local projection」を選択します。
    さらに90%信頼区間を作図するために、Method for SEs and CIsをデフォルトの「Analytic (asymptotic)」に設定し、Confidence interval levels:に「0.9」と入力しOKをクリックします。
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  2. 通常のIRFとLP-IRFの結果を1つのグラフにオーバーレイするには、まず通常のIRFの係数を行列オブジェクトORDINALとして出力するため、コマンド欄で次を実行してIRFを計算します。「save=行列名」オプションを使用します。詳細は開発元ページをご覧ください。
    var01.impulse(se=none, imp=unit, hrz=50, save=ordinal)
    さらにLPでのIRFの同様に係数と信頼区間を行列オブジェクトLPとLPCIという名前で出力します。「save=」オプションに加え、「saveci=」オプションを追加します。
    var01.impulse(irtype=lpjoint, se=a, cilevel=.9, imp=unit, hrz=50, save=lp, saveci=lpci)
    3つの行列オブジェクトまとめて、View > Graph > Mixedと操作し、作図することができます
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  3. オプション

  4. EViewsの局所射影法では、逐次推定法と同時推定法からIRFの計算手法を選択することができます。Sequential local projectionでは、$Σ_ξ$行列のNewey-West、Andrews、HAC推定が可能です。
    データ Joint local projectionでは信頼区間の計算方法をMarginal, Scheffe, Conditionalから選択できます。
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  5. どちらの局所射影法においても、Ahmed and Cassou (2016) のレジームスイッチング設定と同様に、Categorical variablesボックスにオプションのカテゴリ変数(スペース区切りのリスト)のセットを指定することにより、非線形局所射影を実行できます。指定されたすべての変数は、系列の一意の値を網羅するダミー変数のセットを生成するために使用され、各値に対するインパルス応答パスを生成するために使用されます。
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  6. 表示方法

  7. Output viewノードではTable, Multiple graph, Combined graphの3つからIRFの表示方法を選択できます
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参考文献

新谷元嗣, 前橋昴平. (2025). マクロ経済政策評価のための時系列分析. 経済セミナー, 743, 135-145.

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