ARMAモデルのインパルス応答解析

EViewsでは、ARMA項を含む単一方程式のインパルス応答解析をサポートしています。このページでARMAモデルにおけるIRFを紹介しています。


ARMAモデルの推定

    AR(1)モデル

  1. ここでは、経済セミナーno.740、p.49「マクロ経済政策評価のための時系列分析」内の「5. 実証例:加速度原理」に掲載されているインパルス応答解析をEViewsで再現します。 日銀が公開している1980年第一四半期から2023年第三四半期までのgdpギャップを利用して、切片を含むAR(1)モデルとAR(2)モデルをOLS推定します。
    サンプルデータセットはこちらからダウンロードしてください。
  2. 本文にありますように系列GAPBOJがGDPギャップです。シリーズオブジェクトGAPBOJを右クリック > Open as >as Line graphと操作しp.57の「図2」と同様のグラフを作成します。
    データ
  3. まずは、AR(1)モデルを推定します。メインメニューでQuick > Estimation Equationと操作し、Equation specificationボックスで「gapboj c ar(1)」と入力します。
    cは定数項です。ar()はAR項で、括弧内に次数を指定します。
    データ
  4. EViewsはデフォルト設定で、ARMAモデルを最尤法で推定します。詳細はこちらをご覧ください。テキストをそのまま再現するには、OptionsタブのARMAセクションでMethodをCLSに設定して、最小二乗法に変更する必要があります。
    データ
  5. OKをクリックすると、推定できます。1次のAR項の係数は0.92と推定されました。
    Nameボタンをクリックして、名前をつけてモデルオブジェクトを保存します。
    データ
  6. AR(2)モデル

  7. ワークファイルウィンドウで、先のモデルをコピーアンドペーストして、新たに名前を付けて開きます。
    Estimateボタンをクリックして、Equation specificationボックスで「gapboj c ar(1 to 2)」と入力します。
    2次以上のAR項はar(1 to p)、MA項はma(1 to q)と記述します。
    データ
  8. OKをクリックして推定します。AR項の係数はそれぞれ1.31と-0.41です。
    データ

インパルス応答解析

    AR(1)モデルのIRF

  1. インパルス応答解析は、AR(1)モデルを開き、View > ARMA structureと操作し、Select diagnosticsでImpulse Responseと選択します。
    ここでは、テキストの通り、20期先までIRFを計算するため、Periodsボックスに「20」と入力します。
    データ
    Display欄では計算結果の表示方法をグラフと表から選択できます、デフォルトはグラフです。
    与えるショックの定義はImpulseセクションで設定します。デフォルトは残差の1標準偏差ですが、User specifiedを選択すると、任意の値を指定できます。
  2. OKをクリックすると通常のグラフと累積値のグラフの2つが表示されます。
    上のグラフをクリックして選択 > 右クリック > View selected graph(s)と操作して着目すると、AR(1)モデルはテキスト同様時間経過に従い減少していることがわかります。政策効果は政策ショックが発生したタイミングで最大となり、以降は減少します。
    オレンジの破線は±2標準誤差の範囲を示しています。
    データ
    データ
  3. AR(2)モデルのIRF

  4. AR(2)モデルでも同様に操作することで、インパルス応答解析が可能です。AR(2)モデルではショックの2-4四半期付近で効果が最大になることが読み取れます。
    データ
  5. モデル比較

  6. テキストでは情報量規準で2モデルを比較しています。EViewsでは、各モデルオブジェクトを開いてStatsボタンをクリックすると、各係数と合わせて、AICを確認できます。
    比較すると、AR(2)モデルが望ましいことがわかります。
    データ
  7. 予測精度から複数のモデルを比較する機能もあります。詳細はこちらをご覧ください。
    独立変数GAPBOJオブジェクトを開き、View > Forecast Evaluation...と操作します。左側のボックスに比較したいモデル、ここではAR(1)モデルとAR(2)モデルのオブジェクト名を入力します。
    データ
  8. OKをクリックすると、比較結果が表とグラフで表示されます。表の一番下にあるEvaluation statisticsからは、TheilのU1以外の統計量で、AICの比較と同じくAR(2)モデルが支持されることがわかります。
    これらを踏まえて、テキストにもあるように政策効果が最大となるのはショックから一定の時間を経た後となると言えます。
    データ

参考文献

新谷元嗣, 前橋昴平. (2024). マクロ経済政策評価のための時系列分析. 経済セミナー, 740, 49-58.

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