2つの媒介変数による因果媒介分析

 mediate コマンドでは、逐次的な媒介変数、または並列的な媒介変数のいずれの場合でも、2つの媒介変数を含む因果媒介分析を実行できます。 自然間接効果、自然直接効果、制御直接効果を推定し、媒介変数ごとの効果を確認できます。また、逐次媒介モデルに対する感度分析も行えます。

 因果媒介分析では、因果効果を推定するだけでなく、その効果がどのような経路で生じるのかを調べます。処置が結果に与える効果は、ほかの変数を介して生じているのでしょうか。

 Stata 18 では、1つの媒介変数を持つ因果媒介モデルを当てはめる mediate コマンドが導入されました。現在は、mediate により2つの媒介変数を持つ因果媒介モデルも当てはめられます。 これらの媒介変数は、因果順序を持つ逐次型でも、因果順序を仮定しない並列型でもかまいません。いずれの場合も、全体効果を推定し、それを直接効果と間接効果に分解できます。

操作例:並列媒介

 関節炎が健康関連QOLに影響するかどうかを調べたいとします。さらに、その効果がどの因果経路を通じて生じるのかを分解したいとします。 ここでは特に、身体活動と抑うつがこの効果を媒介するかどうかに関心があります。関節炎は身体活動を低下させ、その結果としてQOLを低下させるのでしょうか。 あるいは、関節炎は抑うつの重症度を高め、その結果としてQOLを低下させるのでしょうか。

 この潜在的な媒介効果を評価するため、健康関連QOLの結果変数 hrqol、媒介変数である身体活動 physact と抑うつ depress、 二値の処置変数 arthritis を含む架空データを使用します。交絡変数をいったん無視すると、基本モデルは次のような因果図で表せます。

 関心のある因果経路は3つあります。arthritis から hrqol への直接経路、physact を介した間接経路、depress を介した間接経路です。 ここでの目的は、arthritishrqol に与える全体効果を、これら3つの経路別成分に分解することです。両方の媒介変数を通る因果経路はないため、このような媒介変数を並列型と呼びます。

 共変量や交互作用を含めない単純なモデルから始める場合、次のように因果媒介モデルを指定します。

. mediate (hrqol) (depress) (physact) (arthritis)

 推定された全体効果(TE)は、健康関連QOLの尺度で約 -4.8 ポイントです。これは平均処置効果と同じように解釈できます。 つまり、母集団の全員が関節炎を持つ場合、誰も関節炎を持たない場合に比べて、母平均の健康関連QOLスコアが約5ポイント低くなることを意味します。

 残りの推定値は、自然間接効果(NIE)と自然直接効果(NDE)です。NIE1 はこの約5ポイントの差のうち身体活動による部分を、 NIE2 は抑うつによる部分を、NDE は身体活動や抑うつ症状のいずれにもよらない部分を表します。NIE1 の推定値は約 -1.8 なので、 約2ポイント分は身体活動の低下によるものと解釈できます。depress を介した間接効果 NIE2 は約 -1.3 です。 最後に、NDE は約 -1.7 で、身体活動と抑うつ以外のメカニズムにより約1.7ポイントの差が生じていることを示します。

交互作用を含める

 上のモデルは、処置と媒介変数の間に交互作用を含めない厳密な線形方程式を仮定している点で、やや制約的です。 1つの媒介変数のケースでは、処置と媒介変数の交互作用を含めると、純粋自然効果と全自然効果という2種類の効果推定量が得られ、全体効果の分解方法も2通りになります。 2つの媒介変数を持つ並列媒介モデルでは、合計6通りの分解が得られ、関心のある各効果について最大4つの推定量が得られる場合があります。

 次のモデルでは、交互作用と共変量を含めます。age は処置と結果、媒介変数と結果の関係に対する交絡因子と考えられるため、hrqol のモデルに含めます。 さらに、age が結果に与える効果を2つの媒介変数の関数として変化させるため、因子変数表記 c.depress#c.age c.physact#c.age を使用して交互作用項を含めます。 処置と媒介変数の交互作用、媒介変数間の交互作用を許すために、tinteraction オプションと minteraction オプションを指定します。

. mediate (hrqol age c.depress#c.age c.physact#c.age) ///
        (depress i.male) ///
        (physact i.male) ///
        (arthritis), tinteraction minteraction

 このモデルでは、4つの NDE と、各 NIE について4つずつの推定値が得られます。効果は NDE-00NIE1-11 のようにインデックスで表されます。 これらの各効果は、2つの潜在結果平均の差として定義され、インデックスは潜在結果に対応する反事実的な処置水準を表します。 たとえば NDE-00 は、両方の媒介変数が処置なし(arthritis = 0)に対応する値をとる場合の自然直接効果です。

 NDE は −2.3 から −3.1 の範囲にあり、physact を介した NIE は −1.9 から −2.6、depress を介した NIE は −0.5 から −0.7 の範囲にあります。 各効果タイプ内でどの程度のばらつきが生じるかは、相互作用効果の大きさに依存します。本例では、ばらつきは見られるものの、 最も大きな効果は physact を介した効果(NIE1)と直接効果(NDE)であることがわかります。

逐次媒介

 並列媒介では、媒介変数同士に因果順序がないと考えます。一方、逐次媒介では、媒介変数の間に因果順序があると仮定します。 たとえば、関節炎が身体活動を減少させ、その身体活動の低下が抑うつを悪化させ、最終的に健康関連QOLを低下させるという経路を考えることができます。

 この場合、arthritis から physactdepress を経由して hrqol に至る経路、physact のみを介する経路、 depress のみを介する経路、いずれの媒介変数も介さない経路を考えます。交互作用を含めない単純な逐次モデルを当てはめるには、sequential オプションを指定します。 媒介変数の因果順序は、右側の処置から左側の結果へ向かう順序で指定します。

. mediate (hrqol age) (depress i.male) (physact i.male) (arthritis), sequential

 因果順序を逆にしたい場合は、次のように指定します。

. mediate (hrqol age) (physact i.male) (depress i.male) (arthritis), sequential

 このモデルも交互作用を含まないため、やや制約的です。結果方程式に処置と媒介変数の交互作用を含めるには、tinteraction オプションを指定します。

. mediate (hrqol age) (depress i.male) (physact i.male) (arthritis), sequential tinteraction

 交互作用がある場合にすべての経路別効果を推定すると、比較的多くの推定量が得られます。そこで、いくつかの経路別効果をまとめて、より粗い分解を行うこともできます。 たとえば physact を介した間接効果に主な関心がある場合、depress を通る間接効果をまとめ、physact のみを介した効果に注目できます。 このような媒介変数別効果は、mseffects(physact) オプションで推定できます。

. mediate (hrqol age) (depress i.male) (physact i.male) (arthritis), sequential tinteraction mseffects(physact)

制御直接効果

 実務では、関節炎を持つ人のQOLを改善するため、特定の因果メカニズムを対象とした介入研究を行いたい場合があります。 たとえば、身体活動量を増やせば、関節炎のある人とない人のQOLの差を縮められるでしょうか。このような問いに答えるために、制御直接効果(CDE)を推定できます。 CDEは、媒介変数を関心のある特定の母集団値に固定した場合の、処置が結果に与える直接効果を表します。まず、媒介変数 physactdepress を平均値に固定して直接効果を評価します。

. estat cde, mvalue( (mean) physact depress)

 推定された CDE は約 -2.6 で、母集団の全員について媒介変数が平均値に固定された場合、QOLの低下のうち約2.6ポイントが関節炎に直接起因することを示唆します。

 身体活動量を1か月あたり5時間、または8時間に増やした場合はどうなるでしょうか。この問いに答えるため、媒介変数 depress は平均値に固定し、 physact を5時間および8時間に設定してCDEを評価します。

. estat cde, mvalue( (mean) depress physact=(5 8) )

 結果から、全員が5時間の身体活動を行い、抑うつスコアが平均値に固定されている場合でも、関節炎によるQOLの差は約 -2.7 のままで、physact を平均値 2.247 に固定した上の結果と大きくは変わりません。 同様に、8時間の場合の CDE は約 -2.9 です。contrast オプションを使用すると、2つの値の差と検定を得られます。

. estat cde, mvalue( (mean) depress physact=(5 8) ) contrast

 差はゼロに近く、身体活動はQOLを高める可能性があるものの、関節炎のある人に対して特に大きくQOLを高めるわけではないことを示唆します。 つまり、この介入はすべての人に有用である可能性がありますが、関節炎のある人とない人のQOLの差を縮めるものではないと解釈できます。

参考

 さらに詳しい内容につきましては、下記のマニュアルをご覧ください。

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