Mixed Data Sampling GARCH

混合データサンプリング(mixed data sampling: MIDAS)回帰は、異なる頻度でサンプリングされたデータを同じ回帰モデルで使用できるようにする推定手法です。MIDAS-GARCHモデルのアプローチは、低頻度系列の多数のラグから得られる情報をARCH回帰の分散式に組み込むというものです。たとえば、四半期データのラグを月次データのGARCHモデルに組み込みます。
MIDAS推定についてはこちらをご覧ください。


概要

  1. EViewsは、Conrad and Kleen (2020)の乗法コンポーネントMIDAS-GARCH(1,1)モデルを推定します。MIDAS回帰は、異なる頻度でサンプリングされたデータを同じ回帰で使用できるようにする推定手法です。MIDAS-GARCHモデルの場合、アプローチは、低頻度系列の多数のラグからの情報をARCH回帰の分散に組み込むことです。たとえば、四半期データのラグを月次データのGARCHモデルに組み込みます。Conrad and Kleen (2020)の平均方程式は \[ y_{t} = x_{t}^{\prime}\pi\times\epsilon_{t} \]
    となり、誤差分散$\sigma_{t}^{2}$は遷移GARCHコンポーネント$g_{t}$と永続コンポーネント$\tau_{t}$の積です。 \begin{eqnarray*} \sigma_{t}^{2} &=& g_{t}\tau_{t} \\ g_{t} &=& (1 - \alpha - \beta - \gamma / 2) + \alpha \epsilon_{t-1}^{2} + \gamma d_{t-1} \epsilon_{t-1}^{2} + \beta \sigma_{t-1}^{2} \\ \tau_{t} &=& exp(m + Z_{t-1}^{\prime} \omega_{0} + Z_{t-2}^{\prime} \omega_{1} + \dots + Z_{t-k}^{\prime} \omega_{k-1} ) \end{eqnarray*}
    $x_{t}$は説明変数、$d_{}t$は負のショックを示すダミー変数、$Z_{t}$は低頻度の外生変数の$k$期のラグです。
    • 短期コンポーネント$g_{t}$は定数項を制約したGARCH(1,1)としてモデル化されます
    • ダミー変数$d_{t}$とその係数$\gamma$を導入することで非対称性を持たせることができます;$\gamma = 0$の時は対称となります
    • 長期コンポーネント$\tau_{t}$は定数項$m$と、$Z_{t}$のラグ$k$、加重$\omega_{i}$でモデル化されます。大抵の研究においては、1年分ラグが長期コンポーネントのモデリングに用いられるため、1つの月次変数に対して$k=12$、週次変数では$k=52$の加重パラメータ$\omega_{i}$を推定することになります。

ダイアログボックス

  1. EViewsでMIDAS-GARCH方程式を推定するには、ワークファイルの高頻度データを含むページがアクティブになっていて、なおかつ条件付き分散式のモデリングに使用する低頻度データが別ページに配置されている必要があります。
    データ
  2. 次に、メインメニューからObject/New Object/EquationまたはQuick/Estimate Equationを選択してモデルオブジェクトを作成するか、コマンドウィンドウにキーワードequationを入力します。Methodドロップダウンメニューで「ARCH – Autoregressive Conditional Heteroskedasticity」を選択します。あるいは、コマンドウィンドウにキーワードarchを入力すると、新しいモデルオブジェクトが作成され、推定方法が自動的に設定されます。
    ページ中央のModelドロップダウンメニューをMIDASに変更すると、MIDAS-GARCH設定ページが表示されます。
    データ
    Specificationタブには3つのセクションがあります。
    • 平均式のセクションでは、平均値の指定に関する設定を行います。指定はリスト形式で入力してください。従属変数の名前の後に、平均式の回帰変数を続けて入力します。
    • Variance specificationセクションでは、分散式の設定を行います。Include threshold termチェックボックスを使用すると、分散に非対称成分を含めることができ、EViewsは$\gamma$を自由パラメータとして上記の式を推定します。このオプションが指定されていない場合、$\gamma = 0$を設定しモデルの対称性を強制します。
      Low frequency regressor編集フィールドに低頻度の回帰変数の名前を入力してください。EViewsでは、1つの回帰変数のみを指定できることに注意してください。この変数を指定する構文は、pagename\seriesnameです。ここで、pagenameは系列を含むページの名前、seriesnameは系列の名前です。Lags編集フィールドを使用して、長期コンポーネントに含める低頻度回帰変数のラグ数を指定してください。
  3. Optionsタブでは推定の設定オプションがあります。
    データ
    • MIDAS weightsセクションには、Beta restrictionドロップダウンメニューがあり、そこでMIDASベータ重み付け関数のパラメータに対する制約を指定できます。None(制約なし)、Shape($\beta_{1} = 1$)、Endpoint($\beta_{3} = 1$)、またはBoth($\beta_{1} = 1$および$\beta_{3} = 1$)から選択します。
    • Coefficient covarianceのセクションでは、係数共分散の推定方法を選択できます。
    • Optimizationセクションでは、推定に関連する設定を制御します。
      Optimization methodのドロップダウンメニューでは、BFGS、OPG-BHHH(ガウス・ニュートン-OPG)、Newton-Raphson法、およびデフォルトのHybridから選択できます。Hybrid法は、OPG-BHHH法とBFGS法を組み合わせ、最初の50回の反復計算はOPG法を、その後収束するまでBFGS法を用います。Hybrid法は、OPG法またはBFGS法単独の場合よりも、収束に成功しやすいことがわかっています。
      Step methodメニューでは、反復ステップを選択する方法を選択できます。デフォルトはMarquardt法ですが、代わりにDogleg法またはLine search法を選択することもできます。
      残りのセクションでは、$g_{t}$における係数の反復推定の初期値を制御します。係数の初期値は$\alpha=0.05, \beta=0.95, \gamma=0.1, m=0.1, \lambda=0.2, \theta=2$です。Starting coefficient valuesドロップダウンメニューでは、EViews supplied(ベースラインの初期値)、.8, .5, .3 x EViews(ベースライン値の分数)、Zero、User-specified(ベクトルオブジェクトで定義)、またはデフォルトのRandomを指定できます。Randomでは、まずベースラインの初期値を使用し、収束しない場合は、収束するか、最大ランダム開始回数に達するまで、係数にランダムな値を選択します。$\alpha,\beta,\gamma,m,\lambda$は一様分布$(0,1)$から導かれ、$\theta$は一様分布$(-2,2)$から導かれます。

例題

  • S&P500の日次データを月次データ鉱工業生産指数で推定する
  1. 例題データセットでは、日次のS&P500指数データ(SP500)と月次の鉱工業生産データ(INDPRO)、これらの系列の対数階差に基くリターン系列(RETURNS = DLOG(SP500)*100)が含まれています。
  2. 日次リターン(RETURNS)を従属変数としてMIDAS-GARCHモデルを推定します。分散式の設定では、説明変数に月次鉱工業生産変動(D_INDPRO)の12期前までのデータを使用します。
    Mean equationにreturn c、Low frequency regressorsにmonthly\d_indproを入力します。
    データ
    コマンドでは次のように入力します。
    equation ex1.arch(midas) returns c @monthly\d_indpro
  3. 推定後、EViewsは結果を表示します。推定結果の上部には、モデル設定、サンプル情報、計算情報、および一時的および恒久的コンポーネント仕様の簡単なテキスト説明が表示されます。
    データ
    長期成分TAUは、切片項Mと、傾き係数SLOPE($\lambda$)、パラメータTHETA2($\theta_{2}$)、および低頻度系列MONTHLY\INDPROに依存する関数の和として評価される指数関数として記述されることに注意してください。分散は、長期成分TAUと短期GARCH(1,1)成分の積として記述されます。
  4. 次のセクションでは、平均方程式、分散方程式の短期および永続的成分の標準係数結果、ならびに推定方程式の要約統計量を示します。
    データ
    他のEViews推定器と同様に、出力結果と基となる係数との対応関係を確認するには、View/Coefficient Labelsと選択すると便利です。
  5. 結果の下部には、推定されたM、 SLOPE($\lambda$)、および THETA2($\theta_{2}$)が与えられた場合の、さまざまなラグに対する重み値$\omega$の分布が示されています。
    データ
    「Lag 0」係数はMONTHLY\D_INDPRO(-1)の係数重み$\omega_{0}$に対応し、「Lag 1」はMONTHLY\D_INDPRO(-2)の係数重み$\omega_{1}$に対応し、以下同様です。加重の分布を見ると、永続成分は一般的にD_INDPROのラグとともに増加しており、D_INDPRO(-12)で最も顕著であることがわかります。
  6. 推定後、Proc/Make Residual Seriesと操作し、残差を新規系列として取り出すことができます。取り出したMIDAS-GARCHモデルの残差が正規分布しているかを確認します。系列RESID01を開き、View/Graphと操作し、SpecificセクションでQunatile-Quantileを選びQQプロットを作図します。
    データ
    このグラフは、主に大きな負のショックが、正常状態からの逸脱を引き起こしていることを示しています。
  7. 残差にARCH効果が残っているかを検定するには、モデルオブジェクトに戻り、View/Residual Diagnostics/ARCH-LM Testを選択します。Heteroskedasticity Testダイアログを開きます。ダイアログでラグ数に「7」を入力し、OKをクリックします。
    データ
    ARCH(7)までの検定結果の出力の上部は次のようになります。
    データ
    ARCH効果が残存しているという証拠はほとんどありません。

参考文献

  1. Conrad and Kleen (2020), “Two Are Better than One: Volatility Forecasting Using Multiplicative Component GARCH-MIDAS Models,” Journal of Applied Econometrics, 35, 19–45.
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