潜在因子を抽出し、構造的な理解を深める

Factor Analysis

Factor Analysis(因子分析)アプリは、複数の変数の背後にある共通因子(潜在変数)を抽出し、データ構造を単純化・視覚化するためのアプリです。主成分分析(PCA)や最尤法(ML)などの抽出法と、Varimax などの回転法に対応し、スクリープロットやバイプロットなどの作成も可能です。2025bのバージョンからダイアログの日本語表示にも対応しています。

このアプリの良いところ

  • 因子数を指定して、主成分法または最尤法により因子抽出
  • スクリープロットや2D / 3D のバイプロットを自動生成。
  • データの背後にある「共通因子」を視覚的に理解できます。

Factor Analysisアプリ実行例

           
アプリアイコン Factor Analysis
作者 OriginLab Technical Support
ライセンス 無料
必要バージョン Origin2018b (9.55)以降、Pro版専用
ユーザインタフェースの言語 日本語/英語
カテゴリ 統計
開発元ページ
※英語のみ

使用方法(基本の流れ)

  1. ワークシートをアクティブにする
  2. アプリアイコンをクリックしてダイアログを開く
    ※2025b以降「統計:多変量解析:因子分析」メニューからも利用可能
  3. 変数列と観測値ラベル列を指定
  4. 「設定」タブで抽出法(主成分/最尤法)と因子数、相関/共分散行列などを設定
  5. 因子分析ダイアログの設定タブの設定項目
    項目名 説明
    手法因子の抽出手法を選択(主成分または最尤法)
    分析使用する行列を選択(相関行列または共分散行列)
  6. 「回転」タブで回転法を選択(Varimax など)
  7. 因子分析ダイアログの回転タブの設定項目
    回転の手法 特徴
    なし 回転を行わず、抽出された因子のまま使用
    Quartimax 各変数が1つの因子に強く寄与するよう最適化
    Varimax 最も一般的な直交回転法で、因子ごとの解釈性を高める
    Promax 斜交回転法で、因子間の相関を許容しながら回転を行う

    ※一般的には Varimax が最も広く使用されますが、解析の目的に応じて回転法を選ぶことが重要です。

  8. 「計算する値」タブでレポートに出力したい値を選択
  9. 因子分析ダイアログの計算する値タブの設定項目
    項目名 説明
    記述統計平均、標準偏差
    相関行列変数間の相関係数行列を出力
    回転前の因子負荷量回転前の負荷量マトリクス
    残差行列因子モデルと実データとの差を示す残差行列
    回転後の因子負荷量回転後の負荷量マトリクス
    回転行列回転に使用された変換行列
    スコア係数因子スコアの計算に用いられる係数
    スコア各観測の因子スコア(新しい軸での位置)
  10. 「プロット」タブで表示したいプロット(スクリープロット、バイプロットなど)を選択し、「OK」をクリックして実行
  11. 因子分析ダイアログの計算する値タブの設定項目
    因子分析実行時に出力可能なグラフ(スクリープロット、分散プロット、ローディングプロット、スコアプロット、バイプロット)

実行後には、結果レポートシート、プロットデータのシートなどが出力されます。

例:ヨーロッパ諸国の食習慣分析

操作例として、ヨーロッパ25か国における食品カテゴリ別のタンパク質消費量をまとめたデータを使用して分析します。

アプリウィンドウにあるFactor Analysisアプリアイコンを右クリックし、「サンプルフォルダを開く」を選択して開いたフォルダ中のFactorSample.opjuを開きます。

サンプルデータを開く

「Protein Consumption in Europe」シートには、ヨーロッパの国ごとに以下の食品カテゴリにおける1日あたりのタンパク質摂取量(g)が記録されています。

  • Red Meat(赤身肉)
  • White Meat(白身肉)
  • Eggs(卵)
  • Milk(牛乳)
  • Fish(魚)
  • Cereals(穀類)
  • Starch(でんぷん質〈主に芋類〉)
  • Nuts(ナッツ類)
  • Fruits & Vegetables(果物・野菜)

ヨーロッパの国ごとに以下の食品カテゴリにおける1日あたりのタンパク質摂取量(g)データ

このように変数が多いと個別の比較では全体像がつかみにくくなりますが、因子分析を行うことで背後にある共通の要因(潜在因子)を抽出し、各国の摂取パターンを少数の因子で表現・比較することが可能になります。

因子分析から期待されること

この因子分析を通じて、次のような傾向が得られることが期待されます。

  • 因子ごとに、どの変数がどの程度関係しているか(因子負荷量)を確認できる
  • 各国の食生活のパターンを、少数の因子軸でとらえることができる
  • 「動物性中心の食事」「穀類・植物性中心の食事」などの傾向が見えてくる可能性がある

操作

  1. 「Protein Consumption in Europe」シートのB~J列を選択し、アプリウィンドウにあるFactor Analysisアプリアイコンをクリックします。
  2. 「入力」タブで、「観測値ラベル」として、国名が入力されたA列を選択します。
  3. 「観測値ラベル」として、国名が入力されたA列を選択

  4. 「設定」タブで、「抽出する因子数」を3に変更します。
  5. 「抽出する因子数」を3に変更

  6. 「回転」タブで、「手法」として「Varimax」を選択します。
  7. 回転の「手法」として「Varimax」を選択

  8. 「プロット」タブで、「グラフの種類」で「3D」を選択し、「バイプロット」にチェックを付けます。
  9. 結果レポートで、バイプロットが表示されるように設定

  10. 「OK」をクリックして実行すると、結果レポートシートが出力します。
  11. 因子分析の結果レポートが出力

結果から読み取れること

因子分析の結果、ヨーロッパ各国の食生活に関して以下のような傾向が読み取れます。各因子は、特定の食品カテゴリの消費パターンに基づいて構成されており、各国の食文化の特徴を捉えるヒントとなります。

  • 因子1:「動物性たんぱく質中心の食生活」
    赤身肉、卵、牛乳といった動物性食品の消費が高い国で高いスコアを示しています。
  • 因子2:「植物性食品・穀類中心の食生活」
    シリアルやナッツなど、植物由来の食品との関連が強く、摂取傾向の違いを捉えた因子です。
  • 因子3:「魚介類とでんぷん質を重視する食生活」
    魚とでんぷん質の消費が相対的に高い国で表れる因子です。

各国の因子スコアを比較することで、地域ごとの食文化や栄養の傾向、健康志向などを俯瞰的に捉えることができます。また、食品カテゴリと因子の関係はローディングプロットやバイプロットから視覚的に確認することができます。

ローディングプロット

ローディングプロット

バイプロット

バイプロット

テクニカルサポート

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