Vol.58 条件フォーマットでデータの傾向をつかむ

Originのワークシートで、セルの値に応じて背景色や文字色、フォントなどを自動で変更できる便利な機能が「条件フォーマット」です。このページでは、基本的な使い方に加えて、Origin 2025bで拡張された条件付き書式の新機能についてもご紹介しています。

この記事を読むとこれができます!

  • セルの値に応じて自動で色やフォントを変更し、 データの傾向や異常値を、視覚的にすばやく把握できるようになる
  • Origin 2025bで追加された条件フォーマットの新オプションを、具体的な例とともに理解できる
条件フォーマットを使用して、値が1増えるごとにワークシートセルの色を白から赤に推移させて色塗りし、シートマップ表示

このページで紹介する一部の機能は、Origin/Pro 2025b以降のバージョンが必要です。それ以前のバージョンをお使いの方は体験版にて実際にお試しいただけます。

条件フォーマットの基本操作

条件フォーマットとは、セルの値に基づいて書式(色やフォントなど)を自動的に変更できる機能で、Excelなどでもおなじみのこの機能が、Originでも直感的に設定して活用できます。
この機能は以下の方法で使用できます。

  • メインメニュー「ワークシート:条件フォーマット」を選択し、条件フォーマットの種類を選択
  • ワークシートで条件フォーマットを適用したい範囲を選択し、右クリックして「条件フォーマット」を選び、条件フォーマットの種類を選択

2025bより前のバージョンでは、以下の3種類の条件フォーマットが使用できます。値に応じた色分けや、条件に一致したデータの強調表示など、ワークシート上での視覚的なデータ解析をサポートします。

タイプ 説明 用途例
ハイライト セルの値が指定した条件を満たす場合に色を変更
(組み込み条件/ユーザー定義条件)
規定値との比較や特定値の強調
ヒートマップ セルの値に応じてカラーパレットを適用し、色の濃淡で可視化 傾向や分布の把握、数値の大小比較
重複検出 重複するセルに自動で色を適用 一致する値の発見、比較データの確認

サンプル:「ヒートマップ」を使って条件フォーマットを適用

以下の気象庁の「台風の発生数」ページにある表「2024年までの台風の発生数」に接続し、Origin上に表の値をインポートして操作します。
https://www.data.jma.go.jp/typhoon/statistics/generation/generation.html

気象庁の「台風の発生数」ページ

操作方法

  1. 「データ:Webに接続」メニューを選択し、開いたダイアログの「URL」に以下を入力し、「OK」をクリックします。
    https://www.data.jma.go.jp/typhoon/statistics/generation/generation.html
  2. Origin上に表の内容が表示
  3. 「データコネクタブラウザ」が開いたら、_0のテーブルを選択し、下向き矢印をクリックし、「OK」ボタンをクリックします。
  4. 「2024年までの台風の発生数」表の内容がOrigin上に表示

    サンプルファイル(conditional-formatting.zip)

    データがうまく表示されない場合は、以下よりサンプルファイルをダウンロードできます。

    zip

    zip(81.7KB)

  5. 10年ごとにある表見出しは非表示にします。A列を選択して右クリックし、「列フォーマット」を選択して開いたダイアログで「フォーマット」を「テキスト」に変更します。再度A列を選択して「データフィルタ」ボタンをクリックします。
  6. A列テキスト列に変更してからデータフィルタを適用
  7. A列に追加されたフィルタアイコンをクリックし、リスト内の「年」のチェックを外し、「OK」をクリックします。
  8. A列に「年」と入力された行を非表示にする
  9. ワークシートでデータ列を選択します。ここでは、B~M列を選択し、メニューから「ワークシート:条件フォーマット:ヒートマップ」を選択します。
  10. B~M列を選択し、メニューから「ワークシート:条件フォーマット:ヒートマップ」を選択
  11. 表示されるダイアログの、レベルの項目でデータ範囲(最小~最大値)等を設定し、色の項目でどのように色を塗るかを指定します。ここでは下図のようにして、値が1増えるごとにワークシートセルの色を白から赤に推移させて色塗りするようにします。
  12. 値が1増えるごとにワークシートセルの色を青から赤に推移させて色塗り
  13. 「適用」をクリックするとダイアログを閉じずに設定を適用でき、セルの値に応じてセルの色がグラデーションで設定されます。必要に応じて追加で調整し「OK」をクリックしてダイアログを閉じます。
  14. ヒートマップを適用することで、7月から9月にかけて発生数が多くなる傾向が色の濃淡で直感的に読み取れるなど、データの特徴が一目でわかるようになった

数値が行や列に並んでいるだけでは、どの年やどの月に台風が多かったのか、一見して傾向をつかむのは難しいものですが、ヒートマップを適用することで、データの特徴が一目でわかるようになりました。

Origin 2025bで拡張されたオプション

Origin 2025bでは、より柔軟かつ実用的にデータを視覚化できるよう、以下の新しい条件フォーマットオプションが追加されました。

フォーマットタイプ 説明 用途例
上/下 値の上位・下位N個またはN%のデータをハイライト 成績上位者・高濃度地点の抽出、重要項目の特定
パレート 頻度に基づいて、最頻項目または上位N%を強調 欠陥原因の集中箇所の特定、品質管理での活用
外れ値 IQR(四分位範囲)または標準偏差に基づいて外れ値をハイライト 測定データや分布データにおける異常値の特定
最大値/最小値をハイライト 行または列ごとに最大値・最小値のセルを色で強調 年ごとの高温月や、列ごとの突出データの可視化

それぞれのオプションには異なる用途がありますが、ここでは、「パレート」と「外れ値」の2つについて、実際のデータを使った操作例を紹介します。

サンプルファイル(conditional-formatting.zip)

zip

zip(81.7KB)

※上述の「サンプル:「ヒートマップ」を使って条件フォーマットを適用」でダウンロード可能なファイルと同じ内容です。

パレート

製品検査や品質管理において、パレート分析は「どの要因を優先的に改善すべきか」を判断するために使われます。Originでも作成できるパレート図では、欠陥要因の発生件数と累積割合が可視化されており、80%を超える主要な要因がグラフ上で確認できます。

条件フォーマットの「パレート」を使うと、このグラフでの累積上位80%に含まれる要因が、ワークシート上で自動的にハイライトされます。これにより、グラフで把握した重要項目が、元データのどこにあるのかをすぐに確認することができど、後続の分析やレポート作成の際にも役立ちます。

操作方法

サンプルファイルをダウンロード後解凍し、サンプルOPJUファイルを開いたら、「表示:プロジェクト・エクスプローラ」を選択して開くウィンドウで、「02_パレート」フォルダを開きます。

  1. 対象となるカテゴリ列を選択します。ここでは、Book2のC列を選択し、メニューから「ワークシート:条件フォーマット:パレート」を選択します。
  2. ダイアログで条件を指定します。ここでは、「ルール」で「出現頻度上N%」を選択し、「N」で80が入力されていることを確認します。
  3. 「フォーマット」の項目では、必要に応じて色の設定して「OK」をクリックすると、対象セルが強調されます。

条件フォーマットを使うことで、賞味期限切れや添加物過剰など、欠陥の中でも累積上位80%を占める主要な要因が、ワークシート上で色分けされて一目で確認できます。

外れ値の検出

データの中で「明らかに異常な値」を視覚的に検出したい場合、Origin 2025bからの条件フォーマットのオプションで外れ値検出機能が利用できます。この機能では、IQR(四分位範囲)またはSD(標準偏差)を使って統計的に外れ値を判定し、ワークシートセルを色付けすることができます。

ここでは、気象庁が公開している東京の年間猛暑日(日最高気温35℃以上)の記録を使用して、外れ値を視覚的に確認してみます。

操作方法

サンプルファイルをダウンロード後解凍し、サンプルOPJUファイルを開いたら、「表示:プロジェクト・エクスプローラ」を選択して開くウィンドウで、「03_外れ値」フォルダを開きます。

  1. 対象となる数値列を選択します。ここでは、Book3のB列を選択してメニューから「ワークシート:条件フォーマット:外れ値」を選びます。
  2. ダイアログで外れ値検出のルールとして「IQR」または「SD」を選択します。ここでは、「IQR」を選択し、「係数」はデフォルトの1.5のままにします。
  3. 外れ値検出の方法について

    ルール 特徴 向いているデータ
    IQR法 ・中央値と四分位数(Q1, Q3)に基づく
    ・極端な値の影響を受けにくい」
    外れ値を持つことが前提の非対称なデータ
    (例:気象・生物・マーケティング系など)
    SD法(平均±nσ) ・平均と標準偏差を使う
    ・正規分布に近いデータに適している
    分布が比較的対称なデータ
    (例:測定値・製造品質データなど)
  4. 「フォーマット」の項目で必要に応じて色の設定して「OK」をクリックすると、しきい値を外れたセルが色付けされます。

外れ値の条件フォーマットを適用すると、近年の猛暑日の日数が急激に増えていることが視覚的に確認できます。特に2010年以降、平均から大きく外れた年が連続して現れており、気候の変化が顕著になってきていることが見て取れます。

まとめ

条件フォーマットは、Excelでは「条件付き書式」としておなじみの機能ですが、Originではさらに「統計的なしきい値設定」や「グラフ・解析結果との連動」といった、分析に特化した柔軟な使い方ができるのが特徴です。

今回ご紹介したように、たとえば「外れ値を統計的に自動ハイライトする」「パレート図と連動して上位要因を視覚的に確認する」といった用途にも対応できるため、単なる「装飾」ではなく「分析の一部」として活用することができます。

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